天国の話③くちづけのフルーツ~甘美なる刻~
お久しぶりです。生駒ゆがみです。
本日は(本日も)えっちなシーンがございますので
固めの文章でお送り致します。どうぞお楽しみくださいませ。
フルーツタイム……
幼児教育コンテンツのような響きである。
ゆがみは傍にいた女の子に訊ねた。
「フルーツタイムってなんですか」
そのつり目の女の子は微笑みながら
「女の子がね~……」説明を始めた刹那
「本日のラッキーボーイは生駒ゆがみ~!!」
突然店内アナウンスが僕の名を叫ぶ。
ラッキーボーイ……?
「さあさあステージにあがってー!!」
アナウンスが、先程まで女の子が乱舞していたステージへと僕を導く。ステージには椅子。
そこへ座らされるゆがみちゃん。
「いまからゆがみちゃんに身をもってフルーツタイムをエンジョイしていただきましょう!」
アナウンスの男はぼくをつかってフルーツタイムが何たるかを観客に教えるつもりらしい。
キョロキョロと落ち着かないぼくのもとへ女の子が寄ってきた。
――大きい。たわわとはこのようなおっぱいを指して言うのだろう。彼女が歩くたびにたゆんたゆんという音が聞こえる。
その女の子の手にはカクテルグラス。カクテルグラスの上にはフルーツの缶詰のようなものが乗っている。みかんとパイナップルだろうか。一口サイズのフルーツが乗っている。
「まずはAちゃんがフルーツを咥える~!!」
おっぱいとフルーツで頭がいっぱいのゆがみちゃんをよそにアナウンスは続く。
アナウンス通りにAちゃんというらしい女の子はフルーツを咥えた。
「そしてAちゃんがゆがみちゃんにまたがり~……」
ゆがみちゃんの膝に跨るAちゃん。
「ゆがみちゃんがフルーツをパクリ!!」
ゆがみちゃんもまた、アナウンスのあやつり人形だったのだ。言われるがままAちゃんの口元から出たフルーツの先端を食んだ。もちろん唇を重ねるように。柔らかく。
みかんかパイナップルか……果物の汁が口の端から滴り、首を伝う。しかし、ゆがみちゃんは構わず唇の感触を無我夢中に貪る。
フルーツを少しずつ咀嚼していく。フルーツの残りがキスの時間。砂時計のようにみるみると減っていくフルーツ。溢れ出る果汁。
甘い感触と甘い味とが混ざりあう数十秒。
ゆがみちゃんはひと切れの果物を惜しむように飲み込んだ。
さっきまでのゆがみちゃんは誰よりも甘美な時間を過ごしていたと胸を張って言えよう。
「生駒ゆがみ様に拍手ーッ」
麻痺した頭にアナウンスが喧しい。しかし、ステージの上ではエンターテイナーにならなければなるまい。
ゆがみちゃんはAちゃんにハグとキスをし、「ありがとうございました」と微笑んでステージから降りる。ニヤつくことなく降りることが出来た……やったぜ。
この時の生駒ゆがみはエンターテイナーであった。即席ながら。
ステージを降りるとYさんが「ご苦労wwwエッロいキスかましてきたなwwww」と一言。
「めっちゃ美味しかったっすわwww」
と返事するゆがみちゃん。
さて、このお店にとってゆがみちゃんはただの布石。フルーツタイムの本番は今からである。
「遊び方もわかったところで、フルーツタイムスタートです!」
アナウンスと同時に2,30人の女の子がみんなフルーツの盛られたカクテルグラスを持って店内を巡回し始めた。
Yさんにちゅーし放題なのかを訊ねると、
ゆがみちゃんはラッキーボーイに選ばれたのでタダで1フルーツできただけであり、このイベントは1000円の課金式イベントであるということがわかった。なるほど。
そこからはもう酒池肉林。アルコールの入った生駒ゆがみは恐ろしい。何人の唇を奪ったかわからない。と、同時に湯水のようにチケットを使うので上司の金をいくら飛ばしたかもわからない。ただ、Yさんは終始笑顔であった。
フルーツタイムのさなか、とても美しいルーギャーのチャンネーを見かけた。
こちらと目が合ったが、それと同時にゆがみちゃんは別の女の子に「フルーツどうですか♡」と声をかけられフルーツタイムに入ってしまった。キスをしながらそのルーギャーのチャンネーが頭にあった。
これが不倫している男性の気持ちなのだろうか。肉欲に溺れながら頭の片隅で嫁が泣く。
なんと罪悪感のあるフルーツタイム。柔らかな罪悪感が唇に重なる。ゆがみちゃんは思う。美味しいものは美味しい。
――男は、いつもバカで愚かある。
ショートカットのお姉さん、ロリっぽいボブの女の子、おっぱいのおっきいお姉さん、ピンク髪のギャル……こういうお店に1度も行かない人のキス人数の3倍の女の子とキスを交わした。しかし、しかし、あのギャルはもう回ってこない……。
ロングヘアのお姉さん、ちっぱいの女の子、ハーフっぽい女の子、ツインテールの笑顔がかわいい女の子……
あのギャルはもういない……。上司の金で唇を貪りながらゆがみちゃんはあのギャルを探す。
……いた。
ゆがみちゃんのほうへ歩いてくる!
ゆがみちゃんは「すいません」と声をかけた。
ギャルのNCちゃんはきょとんとした顔で
「どうされましたー?」
と一言。ドリンクの追加注文と思われたのかもしれない。だがゆがみちゃんが欲しいのは唇である。
「フルーツください」
するとどういう心理かNCちゃんは驚いた顔をした。
「え、いいんですか?」
いいんですかも何も ゆがみちゃんはNCちゃんとキス、もといフルーツタイムがしたいのである。
「うん、お願いします」
お願いをするゆがみちゃん、すると
「やったー♡」
喜ぶ素振りを見せるNCちゃん。もうめちゃくちゃにかわいい。「いいんですか?」に続いて「やったー♡」、この子、もしかするとゆがみちゃんのことがタイプなんじゃなかろうかという錯覚さえ覚える。
「じゃあ失礼しまーす♡」
例によりゆがみちゃんの膝に乗るNCちゃん。さて、どんなふうに時間を稼ごうかと思案していると……
「んー♡」
驚くべきことにNCちゃん、フルーツを咥えずにゆがみちゃんにキスをしてきたのである。
それも何度も。
「キスするの好き~?♡」
そう訊ねるNCちゃん。
「アッ、めっちゃ好きですぅ♡」
蕩けきった声で答えるゆがみちゃん。相当にきしょく悪い。ルーギャーのチャンネーからのこんなサービス、蕩けないわけがない。
「じゃあフルーツあげるねえ♡」
パイナップルを口に含むNCちゃん。
少しでも長く続くように……運ばれてくるフルーツを舌先で捉え、押し返しながら少しずつ咀嚼。そうして時間を稼ぎながら唇を味わう。だが、そんな抵抗をしても最後のひとくちはやってくる。
最後のひとくちを食べたあと、そのまま離れないように何度もキスをした。NCちゃんは抵抗することもなくむしろ手をゆがみちゃんの背中に回して絡ませてくる始末。
ぜったいゆがみちゃんのことすきじゃん……
このサービスを受けてそう思わない男がいようか。男はいつだってバカで愚かなのである。女はいつだって賢く強(したた)かなのである。
ここでこの様子を見ていたYさんが最高のタイミングで茶々を入れる。
「ゆがみちゃんその子とキスする時、顔つき違うぞ。好きなんやな??」
「顔に出てました?wwwめっちゃタイプなんですよwww」
「おっしゃ、ゆがみちゃんツーショットタイムいってこいや」
もうこの人には一生頭が上がらないんだろうなという予感。奴隷のように扱われてもそれを甘んじて受け入れなければならない。
「え?ツーショットしてくれるんですかあ♡」
微笑むNCちゃん。頷くゆがみちゃんとYさん。
「じゃあ行こー♡」
めちゃくちゃかわいいルーギャーのチャンネー、NCちゃんに手を引かれ、ゆがみちゃんは別のブースへ……
続