天国の話第2篇〜NC's REVIVAL〜
お久しぶりです。ゆがみちゃんです。
Yさんに3枚のチケットを手渡されたゆがみちゃん。Yさんは暗にツーショットに行けということを言っているのだと思う。ならばそれに応えぬことは上司への反抗である。
――ぼくに任せてください。
そんな志を胸に秘めて。
やってきたNCちゃんにM先輩が声をかけた。
「ゆがみちゃんがな、NCちゃんとあっち行きたいんやって」
そう言ってツーショットタイムのブースを指差す。
「え♡ほんまにー??♡」
NCちゃんは嬉しそうに言う。喜んではいけない。これはあくまでビジネスなのだ。あくまで……ビジネスなのだ……。きっと少しはゆがみちゃんのことが好きなのだろうがあくまで……ビジネスなのだ……!!
「せやねんなー、NCちゃん来るのずっと待っとったもんww」
この店の客の仮面を被ったゆがみちゃんは普段なら女の子に言わない、否、言えないようなセリフをするすると口にする。
「嬉しい〜♡じゃあ行こ〜!!」
NCちゃんに手を引かれてツーショットブースへ。Yさん、行ってまいりますと一瞥しながら。
例によって椅子に座らせられ、NCちゃんはTシャツを着、ゆがみちゃんはTシャツを着た彼女の水着の紐を解く。
「揉めーーー!!!!」
「そしてキスをしろーーー!!!!」
ゆがみちゃんの脳内総統が絶叫する。
総統に命ぜられるがまま、ゆがみちゃんはNCちゃんのおっぱいを揉みしだき、キスをした。
ふわふわマシュマロらぶりーぱいぱいである。
相変わらず最高という他ない。
ゆがみちゃんは思わず素直な感想を漏らす。
「めっちゃ柔らかい…」
「そうかなあ♡そうだ、ゆがみちゃん……」
「?」
なんだろう?と思った刹那「ドMやったよね」という囁きが脳を劈(つんざ)いた。
耳元で囁かれるとマニュアルのように身体をビクつかせてしまうゆがみちゃん。
お使いのゆがみは正常に稼働しております。そんなアナウンスが流れそうである。
気づくとゆがみちゃんの耳はNCちゃんの舌で蹂躙され、ワイシャツはスラックスから引き摺り出されていた。
綺麗に、小麦色に焼けたNCちゃんの手が腹から這い上がってくるのがわかる。より強い性感帯を探してシャツの中で蠢くNCちゃんの手。
ときにぺたぺたと幼児のように、ときに触れるか触れないかくらいの強さで艶めかしく探る。
ピンク色の、微弱な電流が身体中を駆け巡り、ゆがみちゃんはそれに身を委ねた。
そしてついに柔らかな指がゆがみちゃんの乳首を掠めた。
瞬く間に身体を駆け抜けた快楽に思わず目をぎゅっと瞑ってしまう。
……ゆっくりと目を開けるとそこにはにっこりと笑うNCちゃんの顔があった。言葉こそ交わさなかったが、彼女の目は
「見つけちゃった♡」
そう言っているようだった。
刹那、急に唇の寂しさが鎌首を擡(もた)げた。全くもって厄介極まりない体質である。
ソープなどで働く女の子が「セックスはよくてもキスは嫌」ということをよく言っているが、なるほど唇は何か精神的な意味で特別な意味を持つ部位なのかもしれない。だからキスよりも深い身体的接触の最中にも唇の寂しさが際立ってくるのだ。
それが言わずとも伝わったのかすぐそれを埋めるようにどっぷりとキスをされた。ものの数秒だったが溶け合うような感覚があった。
そして彼女の唇が離れる。
離れるとNCちゃんはすぐさまゆがみちゃんの首に噛み付いた。ピンクの電流がビリビリと走る。
NCちゃんの手は片方でゆがみちゃんの乳首をいじめ、片方でゆがみちゃんのゆがみちゃんをズボンの上から擦る。
首筋、乳首、ゆがみちゃんのゆがみちゃんという性感帯を点つなぎにされる。
ゆがみちゃんを見上げた星々に喩えるなら、これが夏の大三角である。
NCちゃんはNCちゃんのNCちゃんをゆがみちゃんの太腿に擦り付けていた。おなかいっぱいとはこのことだろう。贅沢の限りを尽くしている気がする。ゆがみちゃんは身体中にNCちゃんをマーキングされているのだ。
実にえっちである。
……タイマーはとうに3分をはかり終えていたらしい。ぼくらは席に戻るべく立ち上がる。
「今日も遊んでくれてありがとう♡めちゃくちゃ楽しかった♡」
「こちらこそ……色々やばかった……」
「え〜?♡」
前かがみになりながら生駒ゆがみは答えた。
言わずもがな勃起である。
乱れた服装で手を引かれみんなの待つ席に戻る。
M先輩がゆがみちゃんの服装を見て笑う
「ゆがみちゃん服装激しいことなってるやんwww」
「い、、色々ありまして…」
「色々あったねー♡」
NCちゃんが茶々を入れる。
M先輩はいいなあーと零(こぼ)しながら
「てかゆがみちゃん3分とかとうに過ぎてるんやけど!ずるいわー」
「やっぱりですか??ラブラブしすぎましたわ〜」
「NCとゆがみちゃんラブラブやもんな〜♡」
好きの音が胸で鳴る。
ビジネスビジネスと心で100回唱えて自我を取り戻す。我に返ったところでYさんが声をかける。
「おうMくん、ゆがみちゃん、もうちょいしたら出るから最後もう1回楽しんでこいや」
そう言ってぼくらに3枚チケットを手渡す。
――奴隷契約かな……?
新卒でここまで漢気ある上司と仕事ができるとはなんと幸せなことなのだろう。
ふと視線を感じ振り返ると、NCちゃんがそこに立っていた。このやり取りを聞いていたらしい。ゆがみちゃんを見つめていた。(たぶん)
ゆがみちゃんは声をかける。
「NCちゃん、もっかい遊ぼ!」
「ほんまに!?いいの!?」
「ゆがみちゃんNCちゃん好きすぎるやろwww」
M先輩が茶々を入れる。
これでいいのだ。これがいいのだ。
時間がないし……好きとかそんなんじゃないし……いまからいい子見つけるのが大変やからNCちゃんと遊ぶんやし……好きとかそんなんじゃないし……ないし……
ぼくらは手を繋ぎ、つい3分ほど前までいたあの場所へ。
続